今月の言葉

2026年1月

鏡を見て訓練

私は若い頃、まことに意地っ張りで、頑固な一本調子で、すぐ腹を立てるような気質をもっていた。これではならんと思って小さな鏡を懐に入れて訓練したものです。 怒りたくなるとちょっと鏡を見る。そうすると、この顔がまことに醜い。もっとも最初からそう美男子ではありませんが、しかし怒った時、あるいは取り越し苦労をして不愉快な心を持っている時に鏡を見ると、何という顔かなと、自分ながら呆れたものでありました。
5年、10年、15年とだんだんと時が経ち、もまれもまれて、汚れ物のお召しものではないが、あっちのシミを抜き、こっちのシミを抜き、洗濯されてようやく近頃では、知らない人から時々おほめの言葉をいただくようになりました。 汽車に乗って旅行をしておりますと、旦那さんはニコニコしているが何か儲け口でもあるのですかと、こんなことを時々言われる。そこで鏡を見るとなるほどにこやかないい顔をしているなとこう思えるようになった。 鏡に自分の顔をうつして見る、それがどれほど自己の修養の糧となるかしれません。修養に全く無関心ですと、心の中のチリやほこり、汚れが顔に現れ、言葉や動作に現れて、周囲のものが迷惑することになります。

(出居清太郎著『誠書』第3巻より)