会員の声

「生き甲斐」より「つきたての餅」

日本人の平均寿命は、女性87歳、男性も80歳という。長寿時代である。ということは、仕事を退職したあとも長いということである。だから老人も何か生き甲斐を持てと言われる。
もちろん、仕事をリタイアしたあと、楽しく、生き生きと取り組めるもの――趣味であれ、ボランティア活動であれ――を持つことはいいことである。ただ、それを「生き甲斐」と呼ぶと、「甲斐」という言葉には、成果があるというニュアンスが感じられて、成果の出ないものは意味がないと言われている気がして、「生き甲斐」という言葉には少し違和感がある。
それに、趣味にしろボランティア活動にしろ、やがてできなくなるだろう。それでも、いのちの終わりまで、明るく気持ちよく生きていけることが大事なのではないだろうか。

仕事をリタイアしたあと、急に元気がなくなり、弱ってしまう男性が多いという。それに比べて、女性には元気な老人が多い。それは、男性は仕事一途だったのに対し、女性は仕事を含めた生活全体の中に、喜びや楽しみを見出す生き方をしているからなのではないだろうか。
つまり、特定の何かの活動によらなくても、生活全体の中に、生きることそれ自体の中に、満足感や充足感を見出していくことが、人生を通して、明るく気持ちよく生きていけることにつながるのではないだろうか。

ところで、プロフェッショナルの達人たちは、自分の使う道具を大事にする。板前さんは包丁を、野球選手はグローブとバットを、音楽家は楽器を、というように。先日、ラジオで、あるアコーディオン奏者が、イタリア人の師匠から、自分のアコーディオンを、自分の一番大事な女性に接するように扱えと教えられたと言っていた。
私たちは、仕事のプロであろうとなかろうと、みんな生活のプロといえる。毎日毎日、朝から晩まで、生まれた時から何十年と生活している、生活のプロである。
私たち生活のプロにとっての、板前さんの包丁、音楽家の楽器にあたる、仕事の道具は何だろう。それは、心と言えるのではないだろうか。

したがって私たちは、自分の心を大事にし、よく手入れをして、できるだけ良好な状態を保っていることが重要だろう。
良好な心の状態として私は、つきたての餅をイメージしたい。あたたかくて、やわらかくて、つよい心である。心の手入れとは、不平・不満、怒り、ひがみ、ねたみ、うらみや人を責める心などが起きたとき、その心をすみやかに解消することである。
そのようにして、心をいつも良好な状態にしておくことが、人生を明るく気持ちよく過ごすことにつながるだろう。

(Y 男)